「まあ、いいや。
とにかく、中に入りましょうか」
「……」
私、今とんでもなくピンチなんじゃない?
この男と部屋に二人きりってとってもマズイんじゃない?
悪魔の様な笑みを向けて、腕を引っ張る彼。
自分の部屋の前に立つと、山本先生を横目に見ながら私はカバンからカギを取り出して差し込んだ。
ガチャリと開けて、中に入る。
「……汚いですけど、どうぞ」
「お邪魔しまーす」
山本先生は嬉々として、部屋へと足を踏み入れた。
「適当に座って下さい」
「はーい」
花丸のお返事をすると、彼はテーブルの前に座った。
昨日飲んでテーブルに乗ったまんまのマグカップ。
ベッドには脱ぎ捨てられたパジャマ。
いや、昨日はテレビ見てて眠くてどうしようもなかったし、それに今朝は遅刻しそうだったわけで。
と、少し散らかった自分の部屋を見ながら、心の中で勝手に言い訳する。
一応、マグカップを手にキッチンに向かってみるけど。



