「やり方さえ覚えたら……、いや」
そう言って、彼はニヤっと笑うと私の腕をぎゅっと掴み、逃げない様に拘束した。
逃げたくても、狭いエレベーターの中だ。
更には腕もしっかりと掴まれている。
ゆっくりと顔を近付ると、
「俺と付き合ったら家事とかもしなくてよくね?」
そう目の前で囁いた。
息がかかりそうな距離に、気持ちとは裏腹に胸の高まりが増して行く。
「どう?」
「……ど、どうって」
目を泳がせながら言葉を探していると、チーンと音が鳴ってエレベーターの扉が開く。
どうやら4階に到着した様だ。
助かった。
本当に助かった。
ホッとして胸を撫で下ろす私の目の前で、
「チッ」
と、この男は舌打ちをやってのけた。
……し、舌打ち?



