「あーーーもう、わかりました!
入れますから、騒がないで下さい!」
「本当に?」
「はい」
「やったっ!んじゃ、行こうか。安西センセ」
「……」
さっきとは打って変わって笑顔を見せると、彼は私の腕を引いて行く。
……またしても、私はこの男にしてやられた?
え?演技?まさか、さっきのは演技?
私は唖然としながら、彼の後ろ姿を見つめるしか出来なかった。
マンションのエントランスを抜けて、エレベーターに前に来た私達。
「……手、離してくれませんか」
「ん~?逃げそうだから嫌だ」
「逃げませんから…」
つか、自宅だし、逃げるとかないし。
でも彼の手が離れる事はない。
はあっと息をつくと、再度離してと言うのは諦めた。



