「使うなら私、出て行きますよ」


そう言いながら、慌てて教科書を整えると。
山本先生は私の腕をぐいっと掴んで自分へと引き寄せた。



密着する体。
目の前にある山本先生の顔。



「……お邪魔でした?」



口角を上げて、そう言う山本先生。



「いえ、てか、は、離して下さいっ」



久住君に関しては、寧ろ助かったけど。
頭がパニックになり過ぎて、何も出来なかったし。


いや、パニックは現在も進行中だ。
さっきよりもパニックだ。


「ダーメ」

「はっ!?」



素っ頓狂な声を上げると、彼はクスクスと肩を揺らして笑う。
がっちりと腰を掴まれていて、身動きが取れない。