「触りたくないんですか?」
体を戻してカタンと音を立てながら椅子に座り直すと、シュンっと見るからに落ち込む久住君。
「いや、触りたくないわけじゃないよ?
ちょっと吃驚しただけで」
「じゃあ、どうぞ」
語尾に音符マークが付きそうなほど、弾んだ声で言う久住君。
「……では、失礼します」
「何それ、先生おっかしい」
「いや、だって」
そう言いながら、彼の髪の毛に触れた。
思ってた通りの猫っ毛で、ふわふわと手に優しくあたる。
これ。
これって。
「本当に羊みたい」
「え?」
心の声はどうやら口に出ていたらしい。
目をまたくりくりとさせる久住君。
不思議そうな顔で見つめられる。



