「ほら、山本先生っ」

「……」


その名前が出た途端、私の顔があからさまに歪む。


辻先生は何か勘違いしてるかもしれない。
山本先生の存在は私にとって、迷惑でしかなくて、被害しか与えてないと。


何か、ウキウキしててピンクな想像してるかもしれないけど。
私と彼は初対面。


いくらお隣さんといえど、初対面。

あ。
そういえば。


朝に粗品渡されて、それカバンに突っ込んだままだった。


カバンから出して、中を確認すると定番な花柄の可愛いタオル。
あ、可愛い。

使おうっと。


「タオル?どしたの?」


そう言いながら、辻先生が覗き込んで来る。


「あ、今朝お隣さんから貰って」

「へえ。男?」

「……男だと何ですか」

「いや、いい男なら安西ちゃんの家に遊びに行きたいなと」

「全然いい男じゃないですよ」


ハッキリキッパリそう言うと、


「へ~え?」


背後から低い声がして、肩がビクッとなる。