「あんね!山本!あんたは二年、いや、それ以上か。
安西ちゃんとプラトニックな関係でいられる?」

「プラトニック、ですか?」

「そう、手を出さない。何もしない」

「……無理ですね」

「でしょうね。でも、きっとあの二人はやるよ。
安西ちゃんはさっきも言ったけど、真面目なんだよ。
だから、絶対に生徒のワンコと何もしない筈なの。
遊びなら止めておきなって言ったけど、安西ちゃんは全てを覚悟した上でワンコを好きでいるって」

「……」

「まあ、もちろん山本と安西ちゃんが付き合った場合、プラトニックでいる必要はないんだけどね」

「それ、どっちですか」

「でも、その覚悟が二人にはあるって事。
それだけで負けてるでしょ。山本の方が」

「……」



カランとジョッキの中の氷が鳴る。
辻先生から言われた言葉に、何も返す事が出来ず、ただ春斗は俯いていた。



「……ま、実際わかんないけどね。
両想いだって知ったら、ワンコも盛ってしまうかもしれないし」

「そんな子じゃないですよ。彼は」

「お」

「……きっと、俺よりずっと真っ直ぐに彼女を想ってます」

「うん」



ぐっと春斗の手に力が入った。
それを辻先生は黙って見つめる。