終わりの時間になり、放送が入って生徒達が体育館へと集まって来る。
それから私達はステージ脇に向かい、準備を始めた。


少し遅れてやって来た春斗は、先生方に笑顔で頑張りましょうなんて言葉を交わしている。

視線は自然と私へ。
ぱちっと目が合うと、ニヤリと口角を上げてこっちへ近付いて来た。



「安西先生、辻先生。頑張りましょうね」

「……」


顔を逸らして、口を噤む私の隣で辻先生がにこやかに春斗に返事をする。


「山本先生、頑張りましょう。それと」


一旦言葉を区切ると、春斗に近付く辻先生。
顔はとっても笑顔だけど、その口から飛び出す声は驚くほど低い。


「安西ちゃん、あんま虐めたら殴るよ?」

「……」

「……辻先生」


驚きと、感動で口を開いていると辻先生は続けた。



「気持ちはわからなくもないが、一度闘いの場から降りたんだから。
潔く諦めなさい」

「……」



ビシっとそう言うと、ジリジリと辻先生は春斗ににじり寄る。
だけど、次に先生の口から出た言葉は想定外だった。