「ほら、俺達教師もやる事あるんだから準備しろ」

「はーい」


そうやって、会話を終わらせて私を見ると

「行くか」

春斗はそう言った。


私は頷いて春斗と並んで歩き出す。


わかってるんだ。
彼がさっきのお似合いだって話から、さりげなく逸らしてくれたって事は。



「…ありがと」

「何が?礼を言われる事なんてしてないけど」


ケロッとそういう春斗に口を噤む。
わかりながらこうやって言う人なんだ。春斗は。



「それでも」

「ふうん、んじゃ、どういたしまして」


春斗は口角だけ上げて笑うと、「俺こっちだから」と手を上げて階段を下りて行く。
その後ろ姿を見つめながら、本当に優しいなって心の中でぽつりと思った。