「さっきのとこ、ちゃんと覚えて下さいね。俺、行きます」
「…うん」
久住君は扉まで走ると、ぴたっと止まって一度こっちを振り向く。
「昨日の男の事は気にしてません。
俺、そいつより先生の事好きな自信ありますから」
そう言った後、爽やかな笑顔を見せると久住君は廊下へと出て行った。
足音が聞こえなくなってから、私は両手で顔を覆う。
……さっき、私何て言おうとした。
私も、好き。
そう、言いそうだった。
言ってしまいたかった。
腕の感触がまだ残っている。
久住君の温度が。
声が。息が。全てが。
まだ、残ってるよ。
暫く、この熱は引きそうになかった。



