それから、私は楽譜と筆記用具を手に持ち、音楽室を目指した。


窓の外を見ると、ぽつりぽつりと雨が降っている。
その奥にはどんよりとした厚い雲が広がっていた。


私の今の気持ちを表すかの様な、その天気模様に顔を顰めた。


音楽室に入り、ピアノの前に座る。
それから、楽譜をセットして鍵盤に手を乗せた。


久住君が教えてくれた様子を思い出しながら、一音ずつ確実に音を連ねる。


何度も何度も集中しようとするけど、浮かぶのは昨日の事と、久住君の事。
それは音にも表れてて、思った通りの音色を奏でてくれない。


久住君の演奏はとっても綺麗だったのに。


……あー、もううじうじと。
今日、飲もう。
思いっ切り飲もう。


生徒を好きになった?


……もう、それでもいいじゃん。私。


気持ちを伝えなければ。
好きでもいいじゃん。


辻先生なら何て言うかな。
笑いそう。そして、嬉しそうな顔をしそう。


でも、その後にちゃんと答えてくれそうだ。


辻先生を今日は飲みに誘おう。
例え、練習で遅くなろうとも。


金曜日から進展ありまくりですからねって。


そうと決めてからの演奏は、少しだけ上手く弾けたかなって思った。