「いいよ、気にしないで。普段はコンタクトだし。
家でしかかけてないから、そこまで不便ではなかったから」
「それでも」
「あ、じゃあさ」
「何?」
「キスしてくれたらチャラにしてあげる」
「はっ!?」
春斗は私の顎を掴むと、ニヤリと口角を上げて笑う。
一瞬でパニックに陥る私。
「む、無理、むむむ無理」
私が何度もそう言うと、春斗はぷっと吹き出した。
それから、エレベーターの扉が開き先に降りる。
「まじでウケル」
か。
からかったな。
こいつ、私で遊び過ぎですから。
金取るぞ。
もう弁償しろと言われても絶対にしてやらん。
私はふんっと鼻を鳴らしながら、春斗を追い越すと先に歩いて行った。



