「じゃあ、俺教えましょうか?」
「え」
ピアノの譜面台に腕を置くと、その上に顎をちょこんっと乗せた。
ニッコリ笑顔の久住君に私は目をぱちぱちとさせる。
「弾けるの?」
「俺、今度の文化祭でキーボード担当です」
「ええ。本当に!?」
「そうですよ。先生さえよければですけど」
「……教えて貰おうかな」
「じゃあ、今だけ先生と生徒の立場逆転ですね」
「本当だ。久住先生!お願いしますっ」
「うむ、くるしゅうない」
「そんな先生いないからっ」
「え、そうですかね?」
二人して目を合わせては、ぷっと吹き出した。
久住君の誰のモノマネだかわかんない先生が面白くて、私は暫く笑っていた。



