これが要領悪いと言うのなら、それでもいいかな。
なんて、ぽつりと思った。
「……安西、先生?」
突然、声がして鍵盤を叩く手を止めてそっちを見た。
扉に立っていたのは、久住君だった。
「あれ?久住君?」
「何してるんですか」
久住君は小走りで寄って来る。
その顔はどことなく嬉しそうだ。
「見た通り、ピアノ練習」
「何かあるんですか?」
「あ、そっか。久住君今年文化祭初めてだもんね。
毎年教師が校内発表の時に出し物やるんだよ。
それで今年はバンドやる事になってね」
「それでピアノ担当なんですか?」
「そうそう。ブランクあるから、中々思う通りに弾けなくて自主練中」
へへって笑うと、久住君も笑った。



