「はあ、あのさ。
高校生ぐらいの時とかに本気で好きになった相手とかいないの?
その時の気持ちは大人から見たら、甘いって思うかもしれないけど。
でも、あいつらはいっぱい考えてるんだよ。
好きだって気持ちを幻だなんて、簡単にあしらうなよ?」
「……」
何も言えなかった。
私は高校の時、本当に好きだった先輩がいた。
彼女もいたし、付き合う事なんて夢のまた夢だったけど、話出来た時は一日ハッピーで。
先輩が卒業してからも、暫く引きずっていた。
そんな感情を、今の彼等も持っているんだ。
“はい、嬉し過ぎて泣きそうです、真央梨先生”
樫君と付き合えた真中さんは、本当に嬉しそうな笑顔だった。
すっごくすっごく幸せそうだった。
そんな彼女に、私はその恋は偽物だよなんて言えない。
そのぐらいの時の恋愛は本気じゃないだなんて。
……それを、私は久住君に言おうとしてた。



