結局、一緒に帰ることになってしまった。
隣に座る片桐くんは、無言で私を見つめてくる。
「あ、あのー。片桐くん?」
「ん?」
「いやっ、私の顔何か付いてたりとかしてるのかなー?って…」
「いや。仁菜って可愛いよな」
「はぁ!!!!?」
予想外なことを言われて、
完全に戸惑う私。
…ありえない。
こんな言葉。口から簡単に出ちゃうんだよ。この人は。
これ以上、この人の隣にいちゃいけない。
そう思って、私は丁度扉が閉まる直前を狙って電車から降りた。
最寄りの1つ前の駅だし、
なんとか歩いて帰れそうでちょっと安心。
いつもの倍くらいの時間をかけて帰宅した頃には、
精神的にも体力的にもくたくたでした。

