『松浦くん』
その名前を聞いて反応した。
仁菜が祐大のことを
笑顔で話しているのを見てられなくて
無理やり、
手を引いて腕の中に押し込めた。
そうして今、俺の腕の中にいる仁菜を離したくないと、精一杯抱きしめる。
ふわっと香るシャンプーの匂いは、
今まで抱いてきた女の香水の匂いなんかよりずっと自然で、優しくて。
どこか安心する。
「片桐くん?」
少しして聞こえた
仁菜が俺を呼ぶ、少し控えめな声。
「違う。晴。」
苗字じゃなくて、名前で呼んでほしい。
仁菜には特に。
って、なぜかそう思う。
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