「あ、あの。片桐くん。私そんなつもりじゃなくてっ、その…」
私が必死に言っても、
聞いてくれずに歩き続ける。
「だからっ……痛てっ」
次は急に足を止めた片桐くんの肩らへんに頭をぶつけた。
「ここかな。」
小さくそう呟くと、
あるホテルに向かって歩き始める。
「ちょっ、やだ片桐くん!」
もう、完璧に油断していた自分自身に呆れて、目をギュッと瞑りながらついて行く。
「仁菜?なにやってんの?」
少しして、片桐くんに声をかけられた。
けど、
目を開けるのが怖くて開けれない。
「目、開けろよ。何も怖くねぇって」
そう言われて、
少しずつ目を開ける。
少し開けた目に映ったのは、
ただの商店街。
「あれ…?ここ…」
「ラブホ連れてかれるとでも思った?」
ニヤッと意地悪な笑みを浮かべながら
そう言われる。
「そ、そんなこと…考えてません!」
本当は、図星だけどね…。
だって相手はあの片桐くん。
連れ込まれると勘違いしちゃっても、
仕方ないでしょ。

