「晴のこと、好きになってあげて。…とは言えないけど、あの子も寂しかったんだと思うの。」
…寂しかった。
その言葉が、頭の中を駆け巡った。
千尋さんと別れて、家に帰ってからもずっと。
ただ女の子が好きで、いい加減な人だと思ってた。
家でも外でも。恵まれた生活を送ってるんだとか勝手に思ってた。
親と会えない生活ってのは私には分からない。
うちの家は、お母さんは専業主婦だからいつも家にいるし、
お父さんも夜ご飯の時には帰ってくるし、よく喧嘩するけど弟の智希もいる。
そんな私とは正反対な家庭。
…誰よりも人に囲まれてるのに、
本当は誰よりも孤独だなんて。
片桐くんのことを知れば知るほど、
もう悪い人なんて思えなくなっていく…。
今日の片桐くんのどこか悲しげな顔が頭から離れなくて、苦しい。

