「晴はね、ああ見えてすごく寂しがりやなの」
「…え?」
そうは見えないけど…。
心の中ではそう思いながらも、黙って千尋さんの話を聞く。
「うちの家、昔から両親が共働きで2人共仕事人間だから、夜でさえまともに会うこともないくらい家に帰らないの…」
「晴、学校で女の子とチャラチャラ連んでたでしょ?」
そう千尋さんに聞かれて、黙ったまま頷いた。
「あれもね、寂しさからのことなの。私が、晴が小学生くらいの時に結婚しちゃって、余計に寂しい思いさせちゃったみたいで…」
「誰よりも人に囲まれているくせに、愛に飢えてるって言うか…ね。」
想像もしていなかった片桐くんの過去の話。
なんて言葉を返すべきなのか、頭に浮かんでこない。

