「はーー…。間一髪セーフ」
耳元で呟やかれた祐大くんの声。
全身が、ほんのりあったかいものに包まれている感覚。
少しずつ目を開けてみると、目の前にあるのはうちの高校のネクタイ。
そして、祐大くんの腕越しに見えた地面には、落ちてしまったテストが見えた。
祐大くんに抱きとめてもらったことに対してドキッとしながらも、テストが落ちてしまったことが気になる。
取りに行かなくちゃ。濡れちゃってる。
だけど、体を動かそうにも祐大くんの力が強くて動きがとれない。
「ゆっ祐大くん。…助かったよ、ありがとう。」
「…ん」
「も、もう大丈夫だから。その、テスト濡れちゃうから…」
そう言っても、腕の力は弱まるどころか強くなっていく。
ただ転びそうになったところを抱きとめてくれただけにしては、どこかおかしい様子に焦ってくる私…。

