手が離れた瞬間。
片桐くんが私を呼ぶ声が聞こえたけど、
私は一瞬のうちに片桐くんを囲む人集りを含む、人混みの後ろの方まで流されてしまった。
さっきまで近くにいた片桐くんも、
その周りにいた女の子達の姿も、
もう人混み紛れて見えないし。
もう、最悪だ…。
なんて思っていた矢先。
「仁菜!!!!」
聞こえなくなった片桐くんの声が、
また聞こえて、
人混みを掻き分けて私の方へ来る片桐くんの姿が見えた。
「仁菜ごめん。走るぞ。こっち!!」
人混みから出てきた片桐くんに、また腕を掴まれて、そのまま走って校舎の裏まで走った。

