「な、なあ!腹減らねえ?何か買いに行こうぜ」
気まずくなった俺がそう話しかけても、
仁菜は何も言わずに立ち止まったまま動かない。
「仁菜?」
「か、片桐くんの方こそ…」
ボソッと行った仁菜の声が、よく聞き取れなくて少し体勢を下げて聞き返す。
「片桐くんの方こそ…似合ってるよ。その服」
今度はちゃんとその声が聞こえて、
恥ずかしそうに俯く仁菜に
自然と口元が緩んでいく。
やべぇ。
ほんと、可愛いのな。こいつ。
火照った顔を隠すように、少し顔をそらした。
「…仁菜が宣伝係でよかったかも」
「へ!?」
…と顔を上げて聞き返してきた仁菜の腕を掴んで、行くぞ。と軽く引っ張った。
「なんでもねぇよ」
ーーー もし、仁菜がカフェにいたら。
一組のナンパどころじゃすまなかっただろうな。ーーー
と思うものの、声には出さずに。
何??と聞いてくる仁菜に対して無理やり話をそらさせた。