「晴!こっちも頼む!」
友達に呼ばれて、呼ばれた方のテーブルに向かう。
「ここのテーブルの女の子まじ可愛いぞ。お前本当に羨ましいよ」
すれ違いざまに俺の肩に手を乗せてそう言われるけど、俺は逆にお前が羨ましいよ。
こんな女たち相手に、無理やり笑顔振りまくなんてもう一生したくねえ。
そう思いながら、呼ばれたテーブルの客に営業スマイルを向ける。
すると同時に聞こえるうるさいほどの黄色い声。
女にちやほやされんのは嫌いじゃねぇんだけど、今日の俺はそんなことよりも仁菜のことで頭がいっぱいだ。
本当に、前までの俺じゃ信じられねぇくらいに。
今頃仁菜はきっと学校のどっかで呼び込みしてんだろうな。
前に、私はお客さんの呼び込みだから、当番の時間も教室には居れないんだーとか言っていたのを思い出した。
仁菜も俺も、自由時間は1時から。
それまでの我慢だ。
終わったら仁菜と文化祭。
そう何度も自分に言い聞かせて、
その場をやり過ごした。

