「いや、仁菜が思いのほかうまそうに食うからさー」
まだ笑が収まらないのか、口を押さえたままそう言った。
「な、それでなんで笑うのー!」
「悪い悪い。これ1つ買おうぜ。腹減らねえ?おごってやるよ」
店員さんからロールケーキを1つ貰って、祐大くんがカートを押して歩きだす。
「うわあ。ありがとう祐大くん!これ本当に美味しいよね」
先に行った祐大くんを追いかけて、下から少しだけ覗き込んだ。
すると、見えた顔は笑顔じゃなくて、
どこか真剣な表情。
「あれ…祐大くん?」
「仁菜ってさ…」
「うん?」
「今。好きなやつとかいる?」

