でもね…。と言いながら先生は少し苦しそうに顔を歪めた。
「断られちゃって、一方的に日本に帰されちゃった…。」
顔を歪めたまま、少し微笑む先生。
優しい笑顔のようで、どこか見ていられないような辛い表情。
「振られちゃった。そう思ってたんだけどね、この前に…笠原さんが見たっていうあの日。彼が4年ぶりに私に会いに来たの」
そう言われて、中庭で会った男の人の姿を頭の中で思い出す。
先生曰く、アメリカで医者になって、日本へは海外出張として一時帰国しているらしい。
…確かに、お医者さん。って言われるとそんな風にも見えたかも。
「一人前とはまだ言えないけど、私を忘れられなくて、迎えに来たって言うの。
私を無理やり日本へ帰したくせに。
忘れられないなんて、こっちのセリフなのに…」
先生はそう言うと、また少し顔をうつむかせた。
「本当。今更だよね…」
いつもの明るくてハキハキとした玲子先生とはまるで別人みたいで、
想像を遥かに越すほどの大変なことを聞いてしまった…。

