予想通り。仁菜含むクラスの女子数人が、俺のいる踊り場まで階段をおりてきた。
俺に気付いたらしい仁菜と目があったけど、いつものように逸らされる。
でも今は、
ここで折れるわけにはいけねぇ。
「仁菜。」
ちょうど仁菜が俺の前を通り過ぎた時に、仁菜の腕を掴んで引き止めた。
仁菜は意外にも抵抗しない。
「あたしたち、先行くね」
少し動揺している他の女たちを連れて早見が階段を去って、仁菜と2人きりになった。
「あのさ…」
…と言うものの、いざ仁菜を目の前にすると言葉が出てこない。
黙って俺のことを見上げている仁菜。
何か言わねぇと。言葉続けねぇと。
頭ん中ではわかってるはずなのに、
言葉にできねぇ自分が情けない。

