「あれからずっと考えてたんだけど」
 部屋に入ると、涼君が言う。
 そんなに真剣に考えてくれてるんだ。
「ネットを使って情報を集めるのはどうかな」
 それは考えたこともあるけど怖くて、と私は答えた。
「別に個人情報をさらす必要はないと思うんだ」
 涼君は力強く言う。
「本当のご両親なら、ちょっとした情報からでも、すぐさくらちゃんのことが分かるはずだから」
 たしかに、それはそうかも。
「俺がブログを立ち上げようと思うんだ。そこでも情報を集めるようにしたほうがいいんじゃないかな」
「涼君って、行動力があって、何だかすごく頼もしいね」
 私は思ったままの感想を言うと、彼は嬉しそうに笑った。
 笑う表情が、美優さんによく似てるなぁ。
「一応、部活でキャプテンやってるから」
「サッカー部?」
「うん。あのボールを見て気づいたんだね。あさって練習日だし、見にきてよ」
「でも、部外者は入れないんじゃ?」
「外からでもグラウンドがみえるからさ。ちょうど明日は紅白戦の日だし、その試合だけでも。そのあとすぐ解散となるから、一緒に帰ろう」
「うん。それじゃ、見に行くね」
 誘われて嬉しかったんだけど、ふと気づいたことがあった。
 涼君はサッカー部のキャプテンで、かっこいいから、きっとモテモテだと思うし、誘われた女子は私以外に何人もいるんじゃないかなってことを。
 でも、私も少なくとも嫌われてはいないということは、間違いないと思った。
 なんか、涼君のことばっかり考えてる自分がいる……。
 だめだめ。
 こんなんじゃ、両親探しがはかどらないし。



「そうそう。さっきはありがとね。圭輔さんはあのときはまだ、私の事情を知らなかったから、ああ言われたと思うんだけど、フォローしてくれたんだよね。ありがとう、嬉しかった」
 涼君は真顔になって、ちょっと頬が赤くなったようにみえたけど、すぐ屈託のない笑顔に戻って言った。
「いえいえ、気にしないで」
 そして、言葉を続けた。
「それじゃ、これからブログを立ち上げよう」
 横で画面を見つめる私と相談しながら、涼君はブログを開設してくれた。