「それにしても、涼君の推理力はさすがじゃな。推理の材料は、どんなものだったのかな」
 おじいちゃんが言う。
 涼君は、頭をかきながら答えた。
「俺も最初から、『本当に血がつながってないのかな』って、ちょっとは疑うような気持ちはありましたよ。だって、さくらちゃんとヒサさん、けっこう似てるとこがあるじゃないですか。うちの父さんは、さくらちゃんと初めて顔を合わせたときから、つい最近までずっと、さくらちゃんがヒサさんの血のつながった孫だと信じきっていましたよ。あと、今から思えば……さくらちゃんが初めて、俺の部屋で事情を説明してくれたとき、『おばあちゃんは自分が生まれてすぐ他界してしまった』というようなことを言っていましたが、その『おばあちゃん』を『ヒサさんの奥さん』と解釈すると、事実と照らし合わせたときに、しっくり来ますね。恐らくそういうつもりで、ヒサさんはさくらちゃんにそう言い聞かせてらっしゃったんでしょうけど」
「鋭すぎて、怖いわっ!」
 冗談めかした調子で言うと、おどけた様子で涼君から遠ざかるおじいちゃん。
 涼君と私は、思わず苦笑い。
 すると、花火が今度は立て続けに五発ほど、打ちあがる。
 大きな音!
 思わず私たち三人は、空を見上げた。



 ややあって、おじいちゃんがぼそっと言った。
「ちょっとお手洗いに行ってくる。……ぐはぁ、こんなときに……雰囲気をぶち壊してすまんな」
 すごく、ばつが悪そうだ。
 生理現象だし、そんなに気にすることないのに。
 たしかお手洗いは、ここから五百メートル以上も離れた公園のが、一番近かったはず。
「ううん、気にせず行ってきてね。でも、けっこう距離があるけど、一人で大丈夫?」
「わしは子供かっ! もちろん大丈夫じゃ。それじゃ、行ってくるからな!」
 足取り軽く、おじいちゃんが歩き去った。