翌朝―――。
 今日は、いよいよおじいちゃんの退院日だ。
 一晩寝ると、昨日のモヤモヤがウソのように元気になっていた。
 そして、同時に一つの決意も自然と生まれていた。

 今晩の花火大会で告白しよう。
 たとえふられたとしても、今のモヤモヤ状態を続けるよりずっとマシに思えた。
 ふられる可能性は高いと思うけど……でもやっぱり気持ちは知っていてほしい……!
 密かな決意を胸に、私は涼君と一緒にひとまず病院へと出発した。



 予定より早めに病院に着くことができた私たちは、おじいちゃんの病室にさっそく向かう。
 すでにおじいちゃんは、ある程度の手続きや、友達への挨拶などは済ませてあったそうなので、一階受付にて最後の手続きをし、病室から残りの荷物を運び出すだけでよかった。



 手続きもスムーズに済んで、ものの一時間ほどで私たち三人は自宅へと到着することが出来た。



「久々の我が家は格別じゃな」
 感慨深げにおじいちゃんが言う。
 そんなに長期の入院じゃなかったはずだけど、そういうものなのかな。
 私は清涼院さんちに居候中とはいえ、しょっちゅう帰ってきてるから、感慨はほとんどないけど。

「今夜は花火大会じゃぞ。覚えてるな?」
「もちろん、忘れてないよ」
「俺も連れてってくださるんですよね。よろしくお願いします」
 涼君が、礼儀正しく言う。
「もちろんじゃ。夕方六時には家を出よう。しかし、今はまだお昼前じゃし、それまでたっぷり時間があるな。六時まで別行動でもいいか?わしはこれから、友達や知り合いに、退院の報告だの、お見舞金のお返しだの、色々せにゃならんことがあってな。見ての通り、もうこんなに元気じゃし、お昼ご飯はすでに売店で買っておいたし、わしのことは気にせず、デートに出かけてくれい!」
「わ、わかった。でも……デートとか……ま、また何言ってるの?」
 おじいちゃんには困ったもんだ。
 人の気も知らないで……。
「そういうことならお言葉に甘えまして。さくらちゃん、行こっか」
 涼君は「デート」のところを否定しないみたい。
 昨日の女子のことが気になるので、安心も喜びもあまり大きくはないけど。
 そういうことで、涼君と私は自宅をいったん後にした。



「さて、どうしよう? どこか行きたいところ、ある?」
 涼君が聞いてきた。
 昨日の出来事が生々しく脳裏に浮かんでしまうので、ボウリングは却下だ。
 涼君がその友達たちと行ったかもしれないという、水族館とカラオケも「う~ん」って感じだし。
 どうしよう……。

「それじゃ、海に行かない? ちょっと遠いけど、今から出発すれば、余裕で六時までには帰ってこられるから」
 悩んでいる私を見て、涼君が提案してくれた。
「そうだね、そうしよっか」
 他に案もない私には、反対する理由もない。
 私たちは水着など必要な荷物を取ってくるために、また清涼院家へと戻ることにした。