しばらくベンチでじっとしていたら、足音が聞こえたので、私はすぐ立ち上がってそちらを見た。
 やっぱり、涼君だ!
 離れていたのは数時間に過ぎないはずなのに、再会の喜びで気もそぞろの私。
 もう後戻りができないほど、涼君への想いがあふれかえっていることが、自分でもはっきり分かった。

「早くから来てくれてたよね。退屈じゃなかった?」
 涼君は、申し訳なさそうな笑顔で言う。
「全然。サッカー好きだし、楽しく見学させてもらってたよ」
「それならよかった」
 涼君が笑顔のままなので、私もつられて少し笑顔になった。
「よし、じゃあ、お昼にしようか! またカフェにする?」
 その声を聞いた瞬間、待ってましたとばかりに私はお弁当箱を差し出した。

「はい、これ!」
「え? まさかさくらちゃんの手作り?」
「うん」
 手伝ってもらったけど、一応私の手作りではある……はずだよね。

「おお~! 俺、サンドイッチ大好物なんだ」
 お弁当箱を開けて、涼君が言う。
「ぬるくなっちゃうと困るから、飲み物はまだ用意してないんだ。ごめんね」
「それじゃ、あっちの自販機で買ってこよう!」



 そして、飲み物を買って来た私たちは、再びベンチに腰を下ろし、サンドイッチを食べることにした。
「手作りかぁ、感激だなぁ」
 何だか、ここまで喜んでもらうと、くすぐったい。
 運動部の涼君には、量的に少なかったような気がするのを、食べ終わってから初めて気づいた。
 もっと作っておけばよかった……。

「ちょっと少なかったかな? ごめんね」
「ううん、全然。もうお腹いっぱいだよ、ありがとう」
 涼君は優しいから、この辺が本心なのかどうかが、分からないなぁ。
「それじゃ、もうちょっとここでゆっくりしてから、待ち合わせ場所へ向かおうよ」
 時計を見ると、待ち合わせ時刻まで、まだ少し時間があるようだ。
 なので、私たちは休憩がてら少しおしゃべりをしてから、待ち合わせ場所のカフェへと向かった。