皆が外に出て、この後の動きを推し量りあっている。時刻はすでに十時を回っていた。

「河本さん、どうする?電車、まだあるのかな?」

傍にいた課長が、尋ねてきた。

もう少し課長といたいけれど、二次会は大抵、部長や課長といった上の役職者の集まりになる。

正直、参加するのは気が重い、と考えながら、返事ができずにいると、窪田さんが横から言った。

「ああ、僕、送っていきますよ。駅、隣ですし。」

「そ、そんな悪いです。」

「ああ、窪田君、けど、二次会の店なんかはいいのかな?」

「ああ、副部長が、もう店決めちゃったみたいで、後は勝手にやってくれるみたいです。」

窪田さんは、声を潜めて続けた。

「・・・この後、女の子のいるお店に行くみたいなんで、上の人たちだけで楽しみたいんじゃないですか?」

私たちが三人で話していると、後ろから、副部長が山村課長を呼んだ。

「おお、山村君、もちろん二次会行くよな?」

「ああ、はい、すぐ行きます。」

課長がそう声を張り上げ、ちらりと私を見た。

「なんで課長、河本さんのことはご心配なく。僕が送っていきますんで。」

窪田さんは、そう言うと、私を駅のほうへと促した。

「ほら、河本さん、早く。おじさんたちに声かけられないうちに消えるが吉よ。」

窪田さんはそう言って、先に駅のほうへと歩き出した。

私は、少しの間課長と窪田さんを見比べていたが、窪田さんが駅に向かって歩きだしたので、山村課長にぺこりと頭を下げて、窪田さんを追った。

「河本さん、ごめんな、気をつけてな。」

その口調が、いつもより優しく感じられたのは、気のせいだろうか。きっと気のせいだ、それでも、課長が私のことを気にかけてくれて、嬉しかった。