いつの間にか、あたしは毎日の塾通いが楽しみになっていた。あの事件があってから、彼の顔を見るたび、どきどきする。
あたしって単純なのかなぁ?






栄立塾には、あたしと同じ中学の人もいるけど、同じクラスになったことがない子たちだった。いろんな中学の制服の子がいる。

岸田光一郎も、他校の生徒。彼と同じ中学の友達も何人かいるみたい。しかもさっき同じ中学と思われる女の子たちと仲良さそうに話してたもん。



自分がとった講座がない時間は、塾の空き教室で自由に勉強してもいいというシステムになっていた。質問があれば、先生たち専用のルームに行けば、教えてくれる。あたしは、一番最初に教室に案内してくれた先生、村岡先生によく質問しに行った。先生の担当は数学。数学の点数だけが他の教科よりも、各段に悪い。そして、村岡先生と仲良くなった。




あたしは、いつの間にかどこの空き教室で岸田光一郎が勉強しているか、チェックするのが日課になっていた。塾は四階まであって、階段しかない。同じ教室で勉強するのは恥ずかしいので、いつも同じ階の違う教室で勉強するようになっていた。



今日は三階でお勉強。