ドアを開ける。
「はーい。あ、夏期講習からの受講生?こっちの教室に入ってもらえるかな?」
入った途端に、20歳半ばくらいだと思われる男の先生らしき人に教室に誘導された。髪はまぁ今どきの若者…ってわけでもなく、短髪で少しツンツンしていた。
スーツ姿が新鮮で、後ろからついていくときにずっと見てしまった。
案内された教室は、まだ誰もいなかった。いや、いた。男の子が一人、机に座ってる。真剣に勉強しているようだ。後ろ姿を見た瞬間、胸の奥がぎゅーっとなった。あれ?なんだこれ?
先生がその男の子に声をかけた。「光一郎、お前今日もがんばってるな」
その声を聞いて、男の子がこっちをむいた。あ、きれいな顔。
「いつも通りっすよ。そういえば先生、例の約束忘れてないですよね」
もちろんと言いたげに、先生が笑った。例の約束とは、何ぞや?と思ったけれど、人の話には首をつっこむまい。あたしは、教室のうしろのドアの近くに座った。光一郎という名の男の子は、黒板の真ん前に座っていた。
「えーっと、名前なんだっけ?」先生がこっちをむいて、聞いた。
「紺野玲奈です。」
「紺野さんね。この教室で授業始めるから、待っててね。わかんないことがあったら、なんでも聞いて。そこの岸田光一郎に聞いてもいいけど。岸田、お前いろいろ教えてやれよ。」と言って、先生は教室を出て行ってしまった。
いやー。いきなりこんなきれいな顔の男の子と二人きりにされてもね。

