私はひとつ深呼吸をして言った。
「…いしざか、つき」
キーンコーンカーンコーン
言葉の途中でチャイムが鳴った。
あんなに早く鳴ってほしかったチャイムなのに、なぜか腹立たしく思えた。
「はい、みんな楽しかった?プリントは教卓に持ってきて。じゃあ1時間目の準備してね」
中森先生が言った。
私は黙って机を戻した。
多分石坂くんはこっちを見てるだろうけど、そんなの気にしない。
教科書とリコーダーと筆箱を持って教室を出る。
「まじさあ、萌絵!めっちゃイラついてたでしょ」
音楽室の移動中、あゆが言った。
続けて彩未も言った。
「やっぱ?ウチは班違うけど、萌絵こういうの嫌そうだなって思った」
二人は笑いながら話してたが、私は笑わずに言った。
「だってさ、あんなの何の役に立つっていうの?」
「まーまー、社会に出る準備としてってことだよね」
昨日、高校受験のことはその時に考えればいいと言っていたあゆが言う。
「そういえば、今日、音楽の班決めるんだよね。3人で同じになれたらいいなぁ」
彩未が別の話題に切り替えた。
「ね!でもさ、班ごとの合奏って言ったって、ピアノ1人とその他はリコーダーでしょ?合奏て感じしないよね」
私が言った。
「だよね。まあ、班同じになったらピアノは萌絵に任せましょ」
あゆが得意げに言った。
話してるうちに音楽室に着いた。
班はもう先生が決めてあるらしい。
黒板の前に貼ってある紙に、みんなが集まっていた。
私達も、間から覗く。
3人とも班は違った。
がっかりしながらも、私は自分の班員をゆっくりと見た。
女子2人、男子3人の班だった。
もうひとりの女子は、そこそこ仲の良い恵美ちゃんで、少しだけ安心した。
男子は、高田と渋谷と……
いちばん下に、石坂月斗という名前があった。
一瞬固まったが、それも数秒だった。
「あ、橋谷、班同じじゃん」
と、石坂くんが言ったからだ。
