チャイムが鳴る。
みんながぞろぞろと席に着く。
昨日見たときはいなかった石坂くんがいるかどうか確かめてから、私は前を向いた。
担任の中森先生が言う。
「今日は席替えもして新しい席になったことだし、朝のホームルームでミニゲームしましょう」
出た、めんどくさいやつ。
私は心の中でつぶやいた。
グループワークとか、いちばんめんどくさい。
それなら一時間授業やったほうがましだ。
「はい、5、6人の班になって。休んでる人の机も並べてあげて。ルールはこれから配るプリントにかいてあるから」
先生が説明したあとにプリントが配られ、それを読んだ。
ルールは、全員でジャンケンをして勝った人が負けた人のフルネームを呼んで、いちばん名前を呼ばれた人が負けということだ。
なに、この幼稚なゲーム。しかも普通にジャンケンしたのと変わんなくね。
私の心を悟ったのか、同じ班のあゆは、
「さ、机並べて早くやろ!」
と、みんなに声をかけている。

ゲームが始まるとクラス全体がうるさくなった。
やっぱり、こんなので盛り上がる男子も嫌いだ。
私はジャンケンが弱いので、名前を呼ばれてばかりいる。
勝ち負けはどうでもいい。
早くチャイムが鳴って、1時間目は…音楽だから準備をしたい。

何回かやってもチャイムは鳴らなく、もう10回くらいやってみんなが飽きてきた時だった。
ジャンケンをして、班のみんなが一斉に私を見る。
手元を見ると、私の一人勝ち。
最悪。ああ、めんどくさい。
5人のメンバーのうち、あゆは知ってるし残りの3人も小学校で同じか去年同じクラスだったかで名前を知っていた。
問題は石坂くんだ。
下の名前が果たして「つきと」で合っているかわからない。
そもそも、こんな名前聞いたこともない。
そんなことを考えていながら、とうとう石坂くんの名前だけが残った。
石坂くんが、私を見る。