次の日、いつもの机に同じクラスの高田が座っていたので、席替えしたということに気づかされた。
「萌絵おっはよー!今、席間違えそうになったでしょ」
新しい自分の席の前にいるあゆに、見破られた。
「まあね、そういうあゆは間違えなかったの?」
「あたしぃ?んん、ちょっとだけね」
よくわからない返事をについて、もう少し問い詰めようと思ったが、やめた。
あゆの頬は少し赤かった。
あゆの前回の席を横目で見る。
渡部が座って寝ていた。
「あゆ、好きな人いるでしょ」
私は別の質問をした。
「ふぇ!?な、なんでよ、え、ちょっと待って」
明らかに動揺した姿を隠しきれず、あゆは手で顔を覆った。
「…いるよ」
あゆはさっきよりももっと顔を赤くして答える。
あゆは美人と言える顔ではないが、この時の顔はかわいかった。
私は机の上に指で文字を書いた。
あゆはそれを見て驚く。
「なんでわかるの…?」
「そんなん見てればわかるよ。あゆ、わかりやすいもん」
「えー、恥ずかしい。彩未も…知ってるかな?」
「彩未は鈍感だからわからないでしょ」
私が笑いながら言うと、あゆは安心したように微笑んだ。
その時、彩未が教室に入ってきて、私たちの元に駆け寄る。
「おはよー、朝練キツかったぁ。何の話してたの?」
ちらりとあゆを見ると、言わないでと目で訴えている。
「ん、彩未って鈍感だって話」
私はあゆの机に「わたべ」と書いた手を握りしめながら笑った。