もうすぐクリスマスという時期、私はマフラーに顔をうずめて近所の商店街を歩いていた。

時折、カップルを見かけるが私はそのまま素通りしていく。

クリスマスなんて子供のころはとても楽しかったけど大人になるにつれ、むなしくなる一方だ。

お店のショーウインドーを眺めながら、私はためいきをついた。

クリスマスなのにどうして毎日勉強ばかりなのか。

この日くらい休ませてくれたっていいだろうに。

中学受験を失敗したために、両親は私を週3日ほど塾へ連れて行った。

母の母校である明院女学校に行くために毎日必死なのだ。

別に女学校とか成績とかどうでもいい。

なんのために生きているのかさえ、わからなくなっていた。

「何暗い顔して歩いてんだよ」

軽く頭を小突かれ、振り返ってみるとそこには同じクラスの戸部大樹がいた。

「あんたには関係ないよ」

そういって素通りしたけど戸部はついてくる。

何も言わずについてくる戸部に少しイラッと来たが、少しうれしかった。

複雑な気持ちだ。

「おら、周りがカップルばっかでさみしーんだろ。俺が手つないでやんよ」

「はあ!?やめてよ、そんなの」

そんなわけないし。

「お前、友達すくねーしさあ。本当はさみしーんじゃねーの?ずっとお前見てりゃ分かるし」

私は本当はさみしいんだろうか。

「何・・いっつもみてんの・・?」

「ああ?いや・・別に・・」

こういうところが戸部の不思議なところだ。

「私吐きそうだから帰る」

「ちょっ・・何でだよ!」

戸部はまた明日なといいながら反対方向へ行ってしまった。

私と話すためにここまで一緒に来たのか?

やっぱり戸部は不思議でわからない。

でも少しだけ元気が出た。