もしあの時に戻れたなら、君を傷付けずに済んだかもしれない。

「わ、私…悠のことが好き」


ボソボソと小さな声で言葉を紡ぎ出す私。その言葉に、悠の顔がだんだん赤くなっていく。


「俺も…ホントは、ずっと玲奈じゃなくて、美緒のことが…」

「ちょっと待ってよ!」


悠の返事は、そこで可愛らしい声に遮られて。
そこには、大きな目に涙を溜めた玲奈が立っていた。


「どうして?悠君…悠君が好きって言ったんじゃん!ねえ、美緒…どうして悠君を取ろうとするの?」


「ごめん、でも私…」


「もういいよ。美緒のこと、親友だって思ってたのに…」


私を失望した目で暫く見つめ、やがてくるりと向きを変え、玲奈は足早に去っていった。


「違うッ!待って!玲奈!待ってってば!ねえ!!」


叫んでも叫んでも、どれだけ必死に走っても、玲奈との距離は開き続けた。