目を覚ますとそこは、薬の匂いで包まれたベッドの上だった。

「ん〜〜っ」

目を擦ると、じんじんと痛みを感じた。
そう言えば泣いたんだっけ。
なんてぽけ〜と考えてると


『ねぇ。ーーーーーーーーーー?』



一条君に言われた事を思い出した。
ぼぼっと顔に熱が溜まるのを感じる。
どうせ冗談だよね。だってクラス1…
いや、学年1かっこいいんじゃないかってくらいの一条君が私なんかっ!
いやいやありえないよ!

だってあの一条君…だし。
じょ、冗談だよね…?
あっ!夢かっそーだよね!夢だよねっ

そう。私は至って平凡な目立たない一般生徒、橘 瑠美。

それに対し一条君は、女の子にも男の子にも人気の〝一般〟なんかじゃ収まりきらないアイドル的存在。
一条 光輝君。

本気なんて…そんな訳ないよね。






…ん?て言うか…あれ?
私…なんで保健室にいるんだっけ?
確かーー


『ねぇ。ーーーーーーーーーーー?』

そう言われた後…
泣き顔を見られてるって言う恥ずかしさと振られたショックと一条君の発言への驚きと、、、

色々混ざって……

キュ〜って力が抜けて…寝ちゃった⁈
うそっ!泣き顔見られた上に寝顔も見られたなんて恥ずかしすぎる!!

えって事は、一条君がここまで運んでくれた…⁈しかも夢じゃない⁈
お礼…言わないとっ!

ガバッと起き上がって、その勢いで立ち上がる。
と、目の前がフラついてーー

っ!倒れる!
反射的に目をぎゅーっと瞑った。





ーーあれ?

痛いの覚悟して目瞑ったのに、いつまでたっても痛みは届かなかった。

「はぁ。何やってんの?」

そんな、呆れたような声とため息が届いた。
顔を上げると、私を支えてくれたのは一条君だと分かる。
急に恥ずかしくなり、足に力を入れてビシッと立った。

「ご、ごめんなさいっ!」

恥ずかしすぎて顔を上げられない。

「もう本当。バカは風邪引いた事に気がつかないって迷信じゃなかったんだ。
君、熱あるんだよ。風邪、引いてるんじゃない?」

何だか心に刺さるような言葉を打たれてまたまた顔に熱が溜まった。

「すみません。」

何で謝ってるのかも分からずに、ただ謝った。

「別に謝る必要は無いんじゃない?
悪いことしてるわけじゃないんだし。」

…ごもっともでございます。。。

そんな時、ぶるっと寒気を感じ、上着に手を当てた。
あれ?これサイズ大きい?

袖に腕は通されず、ただ肩に引っかかってるだけのそれは、明らかに私のじゃなかった。

「あの…上着って…」

もしかして。と思って一条君に聞いてみる。

「ん?あぁ。上着?
それ僕のだよ。空き教室の時に君に掛けたんだけど気づいてなかったの?」

……ん?あっそーいえば…。
背中に何かかかった気がして頭上げたんじゃん。
お礼しなきゃ。

「えっと、その…ありがとうございます。」

そう、言い終わった丁度その時フラッと足元がフラつく。
身体が前に倒れて、一条君に寄りかかる形になってしまった。