しばらく彼女のことも忘れて夢中になってボールを蹴っていた。


ボールを蹴る音が観客席に当たり、音が辺りに響いた。


いつの間にかボールが見えなくなるくらい暗くなって我に返った。


すると未羽が近づいてきて声をかけた。


「少し一緒に休憩しませんか。」


彼女を見ると、両手にノンカロリーのアクエリアスを持って立っていた。


俺はお礼を言うと、一緒にグランドの一番近くにある椅子に二人で並んで座った。



「すごく上手なんですね、私リフティングあんなにできる人初めて見ました。


私はあんなにできない。」


そういって笑顔で俺を見た。


俺は嬉しくて素直にお礼を言った。



「小学校の時から、高校までずっとサッカーしてました。高校もサッカーで入学して。


でも高校入った途端怪我してしまって。


そのまま部活辞めて、ずっと今日までボール蹴ってなかった。」


本当のことだった。


今日まで誰にも話したことのない、自分の心にも隠してしていたことだった。


「怪我大丈夫なんですか。」


未羽はそう心配そうに俺の顔を覗きこんだ。


俺は笑顔で怪我をした利き足首を彼女のほうに突き出して、指さした。


「俺もすごく心配してました。でも、全然痛くなかった。」


彼女の顔が明るくなった。


そんな気持ちがすごく嬉しかった。


「すげー嬉しいです。」



 その時だった。



ドンという爆発音がした。


音がした方を見ると、夜空に大きな花火が開いた。


赤とピンクの花火だった。


すぐに同じような音がして、今度はグリーンの花火が上がった。


二人で顔を見合わせた。


俺は彼女の右手を握った。



「行こう。」



立ち上がり、花火がよく見えるところを探して走りだした。


彼女が声をあげて笑う。


俺も笑顔になる。


道に迷うたび、二人で顔を見合わせ花火を探す。


その度彼女の手を強く握った。