息を切らして現れた彼女は、仕事帰りのせいか紺色のアンサンブルにベージュの
スカート、黒のヒールの低いパンプスで現れた。
「待たせてごめんなさい。退屈でしたよね。」
そう心配そうに俺を見つめる。
全然大丈夫だよ、君を待っているのがこんなに楽しいなんて知らなかった。
本当はそう思っていたけど、言えなかった。
「大丈夫だよ、見たかった本があったから。ついでに買っちゃった。」
そう言って袋に入れられた雑誌を見せた。
「それより、どこに行こう」
そう彼女に聞いた。
「昨日はドライブ連れていってもらったから、今日は私がご馳走します。
そんなに高いところじゃないんですが、いつも行ってる中華料理のお店なんです。
天津飯がおいしくて。」
そう言って彼女は歩きだした。
俺も彼女の後ろからついていき、横に並んで歩き出した。
お店はすぐ近くにあった。
小さいけど小奇麗で、天津飯はとても美味しかった。
食べながら食事が済んだらどうしようと話した。
彼女はどうしようと考えこむ。
その姿が可愛かった。
俺は思い切って誘ってみた。
「今度俺サッカーの試合に出るんです、ボールに触っときたくて。良かった一緒に行きませんか。」
彼女はぱっと顔を明るくさせた。
「ぜひ、行きたいです。」
そんな姿がまた俺を喜ばせる。
店を出て、二人で歩きだした。
駅に行き、電車に乗り、俺の家へと動き出した。
見慣れた景色の中に彼女がいるというのが、少し新鮮だった。
「ここが俺の家です。車で行きましょう。ここで待ってて、カギとボール取ってきます。」
彼女を待たせて直ぐにカギとボールを取ってきた。

