きっとこんなこと聞いたら、普通の人なら何バカなこと言っているんだろうと


思うと思う。
 

 実は俺もそう思ってしまう一人だった。


 だけど大袈裟な話ではなく、本心で思ってしまえる自分がここにいた。




 実際昨日の帰り道、彼女を家に送り届け自分のアパートに帰るまでの間、俺はそのことを考え続けた。


俺は今まで何度か女性と付き合ったりしたことがある。


 出逢って、お互いを知り合い恋に落ち、お互いの気持ちを確認するまでが最高なのだ。


それまではお互いを思いやり、お互いに確認し合うことで、恋は愛に変わっていく。


その頃は毎日が楽しくて仕方がなくなるのだ。


お互いに知らないことばかりだから、それを知ることだけでとても楽しい。



  問題はそこから。


俺の場合は、そのあたりから何時もどこかちぐはぐになっていく。


別れの後、色々考えたり思い返してみる。


正直よくわからない。


その度理由も様々だった。


原因も1つとは言えない。
  

 けれどたいがい良く聞く様な原因だ。


倦怠期とか、愛情がなくなったとか、信用できなくなったとか。


とにかく、そんなので恋愛感情って案外簡単に失われていってしまう。


 
 実際結婚している夫婦が共にずっと一緒にいるかというとそんなことはない。
 

 付き合っていても、別の女性、男性と遊びに行くなんて人の話もよく聞く。


 既婚者の社員が、自分から出張に行きたがる理由もそのあたりにあるなんて、
 

 喫煙所で皆ふざけてそんな事よく話してたりする。



 そんな時、俺は笑って話を聞いているだけなのだが。


 今はそんな日が来るのがとても怖い。



 ようやく彼女と何かが繋がった気がしたからだ。


 そしてそれは自分にとってとても特別な何かになっている。


 これを失くしたら俺にはいったい何が残るのだろう。


 そんな事を思うと胸が苦しくなってしまった。


この思いもいつか無くなってしまうのだろうか。


そう思うことが俺を苦しめた。


こんなこと正直初めての経験だ。



ある日彼女と俺がそんな冷めた間柄になってしまった。


今までの経験上絶対にないなんて、とてもじゃないけどあり得なかったから。