電車を降りて会社へと歩いていると、同じ営業の先輩が後ろから話かけてくれた。


 挨拶をすると、いきなり仕事の話を始めた。


 「和彦ってサッカーやってたよね、今度取引先の会社のフットサルチームと試合するけど

良かったら出ない?」



 先輩の担当は大きな取引先がメインだ。


 これは俺にも顔を売るチャンスかも。


 「いやさ、急にメンバー一人出張入っちゃってさ、今度の日曜なんだけど、どう?」


 こんな時一瞬でも躊躇ったらチャンスは逃げてしまう。


 俺は元気に必ず参加しますと答えた。


 少し、声が大きかったらしい。


 周りの人が迷惑そうに振り返った。


 俺は済まなそうにその人たちに頭を下げた。


 先輩もだ。


「良かった、助かったよ。じゃ、詳しい時間決まったら連絡するわ。」


 そう言って先に歩いていった。


 俺は心の中で小さなガッツポーズをした。


 今日の昼の休憩時間から、同期誘ってボールに触れておこう。

 


 ところが、オフィスにいってみると、しばらく外回りが多かったので清算の伝票がたまっていた。


 今日中に処理してくれと、恐ろし女子社員にすごまれた。


 仕方なく処理を始めてみると、定時までに終わりそうもなかった。


 慌てた俺は、昼休みもそこそこに仕事をした。
 

 そしてあっという間に夕方になってしまい、一日終わってしまったのだった。


 けれど何とか仕事を終えることができた。


 定時を少し過ぎて、あたりを伺いながら席を立つ。
 

 女子社員の後ろを通る時、邪魔にならないよう小さな声で挨拶をする。


 要件が終わったので、女性社員も俺の顔も見ずに挨拶をした。


 お疲れさんです。心の中で彼女にそう挨拶する。


 そういえば、彼女の仕事の処理まだ終わってないって言ってたっけ。


 少し後ろめたい気持ちで会社を後にした。