サクラと密月




奥様の存在も知ってはいた。


 当時の私はだけど、自分のこの恋のことで精一杯だった。


 部長はプライベートをあまり会社に持ち込まない。


 だからあまり気にせずに済んだ。


 全ていおいて今までの男と違う彼に心底溺れていた。



 そうさせてくれていたのだ。 



 自分が出会う前の事なんて、どうして気にすることができる?



 そんな事考えられないほど毎日が楽しくて、彼に甘えていた。


 彼もそんな私が可愛く、男として自分に自信を感じていたのではと、今は思う。


 自分にとって今、この時がとても大切だった。



 今思えば怖いもの知らずだ。


 それ以上に毎日が新鮮で楽しかった。


 そしていろんな事を教えてくれる彼はとても魅力的だった。 


部長が話す東京のお店や、北海道のゴルフ場。


冬のフグや夏の鰻。


どれも知らない世界で、彼の話を聞くと一緒に体験してみたくなった。


実際そう口に出していたっけ。


会社の仲間としてそういうものに、一緒に参加することがやがて多くなり、行動することが多くなって


いつの間にか自然にそういう関係になっていった。