サクラと密月




部長とそういう関係になったのは、会社に入ってすぐだった。



最初に配属されたのが部長の下だった。


あの頃の部長はまだ若かった。


白髪もあったが、なにより生活感があまりなかった。


いつも何処かへ出掛けていて、皆にお土産を買って来てくれた。


仕事もバリバリして、電話も部長を追いかけていたっけ。


時々会社の飲み会などで聞く色々な話は、新入社員で新卒の私にとって、新鮮で


魅力的だった。


社会人生活に夢と希望抱いていた私にとって、今まで付き合ってきた学生の男の子達と違って、


彼は逞しく見えた。


 初めてのデートがホテルの中華料理店なんて、どう考えたって男として学生とは全く違う。


 勿論そんな事が人を決めるなんて今は思っていない。


 そのころの私は子供だったのだ。

 
 愛とか恋とか本当は良く解らない。


だけどあの時の私は、少なくとも部長に本気で恋心抱いていた。


 それは確かだ。


 仕事で一緒にいればいるほど、プライベートと仕事の境界線は曖昧になっていく。


 そのころの私には、その延長線上にその恋があった。