「また来たの?」そう呆れながら笑う先輩。


笑顔が穏やかで幸せそう。


私は申し訳なさそうに笑いながらも、お宅に上がり込む。


たいがいこの時間、先輩は晩御飯と格闘中だ。


その横で私はソファに座り、今日の会社の愚痴を聞いてもらう。


先輩は楽しそうに話を聞きながら、また楽しそうに料理をする手は休めない。


「料理なんてしたことないから大変。」そう言って笑う。


 その笑顔がまた可愛いんだよね。


切れ者で上司でさえも一目おく先輩だったとはとても思えない。



実際先輩が辞めてしまって困っている上司を、何度も何人も見ている。


 今日も東京の本社から問い合わせがあった。


先輩がいないと言うと、電話の相手はやっぱり。と、いう感じになった。


 自分では上手く対応出来なかったことは悔しいけど、何時か先輩の様になりたいと


ずっと思ってる。



 暗くなった部屋の中で、楽しそうに人参を刻む先輩を見ていると、なんだか自分も幸せな気分になる。


 先輩のご主人すごく優しくて、食事が用意してあるとすごく喜ぶんだよね。


 しかも本当に嬉しそう。


 待ってるのってこんなに楽しいものだとは知らなかった。


 喜んでくれる人がいるのって、本当はすごく自分を元気にしてくれるんだよね。


 その人が大好きなひとなら尚更だよね。



 大好きな人だけを待つだけの毎日って実はすごく幸せなんじゃないかと思う。



 ただその人の一日中考えて。


 一日中思って。