名駅の東側は再開発が進んで、いつの間にか古いビルなどがなくなり


新しく沢山の建物がならんだ。


その辺りには食事ができるお店が数多くあった。


俺は仕方なく彼女の言われるままに後をついて歩く。


表は簡素だが、味のある看板のある小さな居酒屋に入った。


奥の二人が向き合う席に座る。


少し値段が高そうだ。



俺はあまり飲みたくなかったが、ビールを注文した。


「今日は突然誘ってごめんなさい。でも来てくれて嬉しかった。」


そう言って笑う。


彼女が部長の彼女だと知らなかったら、気にせず付き合い続けていただろう。


そんな世界があるなんて俺は知らなかったから。



ここも高そうだけど、誰と来ているのだろう。



案外と香織のことを良く知らなかったことに気づく。


「久しぶりね、ずっと恵介さん忙しそうだったから。なんか近寄りがたい感じだった。」


俺は曖昧に返事をした。避けていたなんて死んでも言えない。


「彼女と上手くやってるのかな?」



それは貴方でしょう。


部長とは一体どうなんですか。


そう聞きたかった。


でも聞けない聞けるはずがない。


またもや曖昧に返事をする俺。


彼女は一体どうして俺を誘ったんだろう。


「話ってなんですか」


できれば早めに解放してください。


お願いだから寝たり酔いつぶれたりしないでください。


俺は祈るように願った。


所が彼女は俺の質問には答えず、今日は同僚の女の子が失敗したとか、直属の上司の


悪口を話始めた。


俺が口を挟む間もなく、お酒が次々運ばれてきた。


おーい、目の前に俺がいること忘れないでくださーい。


おーい…