よくこうして大学の休憩室でコーヒーを飲んだっけ。
彼女はコーヒーより紅茶派だった。
二人で行ったカフェでも必ず紅茶を頼んだ。
何をいつも話していただろう。
お互いの好きなものの話ばかりだった気がする。
そうして思い出に浸っていたので、隣に香織が来ていても全く気がつかなかった。
「何考えてたの。今から何が予定はある?良かったら一緒に食事でもどう。」
俺はしまった、と思った。
あの出張以来、なんとか彼女を避けていたのに。
俺はなんとか逃げ切る方法を考えていた。
「名駅の近くに美味しい居酒屋を見つけたんだ。」
そう言って彼女は俺に近づいてきた。
誰もいない休憩室の中では、俺は明らかに不利だった。
「仕事の事で何がなかった?今日部長に呼び出されたでしょう。話なら聞くけど。」
そう言われて俺は午前中にあった事を思い出した。
ひょっとして、こいつのせいなのか。
俺はどうしてその事を知ってるんだという顔をした。
「やっぱり、秘書のミキから聞いたの。大丈夫?」
女って恐い。
くそう、俺は彼女について行くことにした。

