サクラと密月




結婚式の二次会の時、そう言って皆の前で笑っていた。


彼女が幸せなら俺は満足だったから。


すると突然、彼女は少し涙目になった。


何も言わず、うつむき涙を隠そうとする。


俺は心底焦った。


「恵介は相変わらずね。私いつも貴方に甘えていた。


同じ年なのにしっかりしている貴方に負けたくなかった。勉強でも、プライベートでも。


勝ってどうするつもりだったんだろう。」


そう言って笑った。


「馬鹿みたい、そんなんで結婚して。」


言っていることさっぱり分からない。


俺は掛ける言葉を失った。



「ごめん!!恵介のせいみたいに言った。ずるいよね。時間大丈夫?」



俺は時計を見た。


確かに少しヤバイ時間だ。


 けど、このまま返せない。


「ごめん、確かに時間だ。もし、良かったら何処かで待ってて、心配で返せない。


プレゼン短くするわ。」


彼女は曖昧に笑った。


「必ず連絡するから、ごめん!この辺りで待ってて。」


そう言って東京駅で別れた。


俺は急いで取引先へ向かい、話をつけた。


下準備が効いたのか案外と話は進み、次回の約束もした。


彼女のことが心配で、急いで東京駅に戻った。


途中何度か電話をしたが繋がらなかった。


日が傾きかけた午後、蘭と別れた場所へ向かう。



しかし、そこに彼女はいなかった。